防音工事の勘違い その1:ペアガラス編

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こんにちは、防音・音響専門の建築士、紅です。
今回から防音工事でよく間違って認識されていることについて書いてみたいと思います。

一応、シリーズものにしていこうと考えています。

第一回目は多くの方が勘違いされているペアガラスについて。
最初に結論をまとめておきます。

  • ペアガラスは単板ガラスよりも防音効果が劣る
  • 単板ガラスは高音域に欠陥がある
  • 二重サッシが手っ取り早く、かつ効果大

ではそれぞれの項目について詳しく解説していきます。

目次

ペアガラスは中低音域の防音性能が劣る

ペアガラスは住宅の窓ガラスとしてはすっかり標準となりましたが、どうも防音性能が高いと思われているようで、実はこれは間違いです。

ペアガラスは単板ガラスに比べると中低音域の音が通りやすくなります。2枚のガラスが挟まれている空気をバネにして共鳴が生じるためで、これを共鳴透過現象と言います。平たく言えば太鼓みたいなもんです。

たとえば家のすぐ外を車が通ったとき、車のブーンという低い音は単板ガラスより聞こえやすいと言えます。

逆に高音は単板ガラスよりも防音性能が高いので、一概にどんな音でも通りやすいということではないのですが、単板ガラスより音が通りやすい音域が広く、ふつうは単板ガラスよりも防音性能が劣ると言って差支えないと思います。

ではペアガラスって何のためにあるのかというと、断熱性能と結露防止性能を高めるためです。2枚のガラスの間に空気層を設けることで、熱を通りにくくしています。

ペアガラスというのはもともとAGC社の商品名で、一般名は「複層ガラス」と言いますが、「ペアガラス」の名称が広く使われるようになり一般名詞化しました。

ペアガラス
ぺガラスの断面。銀色に光っているのは中空層端部のスペーサー

戸建て住宅で現在もっとも一般的なペアガラスは3mmの透明ガラスを2枚使い、その間に12mmの空気層を設けたものです。これと、ガラスの総厚が同じ6mmの単板ガラスとで、防音性能を示したのが下記のグラフです。

単板ガラスとペアガラスの遮音性能比較グラフ
グラフの見方
  • 横軸は音の高さ=周波数(Hz)で、左から右にかけて音が高くなっていきます。
  • 縦軸は音の通りにくさ=透過損失(dB)をあらわし、上に行くほど防音性能が高いです。
  • FL6は単板ガラス6mmです。
  • FL3+A12+FL3はペアガラスで、2枚の単板3mmの間に空気層12mmという意味です。

これを見ると、1kHzを超えるあたりまではペアガラスよりも単板ガラスの方が防音性能が高く、1kHzから4kHzの間だけそれが逆転しています。

日本人の話し声は男性で500Hzあたり、女性で800Hzあたりですから、会話の音はペアガラスの方が通りやすいですね。

参考までにピアノの音域は、基準音であるまんなかのラの音を440Hzとして、一番下のラの音が27.5Hzで一番上のドの音が4.186kHzです。1オクターブ上が倍音(周波数が倍)ですから、まんなかのラの1オクターブ上のラが880Hz、さらに1オクターブ上が1.76kHz、逆にまんなかのラの1オクターブ下のラは220Hzです。

下記のサイトが鍵盤と周波数の関係が分かりやすいです。

単板ガラスは高音域に防音の欠点がある

さきほどのグラフを見て気が付いたと思いますが、単板ガラスは高音で防音性能が落ちる箇所があります。この現象を専門用語でコインシデンス効果と言います。

一級建築士の試験によく出ます!

コインシデンス効果の原理を説明するのはなかなか難しくて、それだけでページを使い切ってしまうので詳細は省きますが、物体の固有振動周波数と物体表面に斜めの角度から入射された音の周波数が一致(coincidence)することで起きます。なんのこっちゃという感じですが、とりあえずそういう物理現象とだけ覚えておけば十分でしょう。

コインシデンス効果は普通の壁でも起きますが、板ガラスでは顕著に表れ、さきほどのグラフに載せた厚さ6mmの単板ガラスではちょうど2kHzあたり、3mmだと4kHz、12mmだと1kHzというように厚さに反比例します。グラフにすると分かりやすいです。

コインシデンス効果の比較グラフ

防音合わせガラスという製品

コインシデンス効果はやっかいですね。ガラスを厚くすれば全体的な防音性能は向上しますが、厚くすればするほど中音域に欠点が出やすくなります。

しかし世の中にはこのコインシデンス効果による欠点を解消した製品が開発され商品化されています。

それが防音合わせガラスというものです。

原理としては、2枚のガラスの間に特殊なフィルムを挟むことにより、音のエネルギーを熱に置き換えて消し去るというものです。

おまけに、このフィルムにはガラスを割れにくくする効果もあるため、防犯上有利というメリットもあります。

デメリットとしては高価なことと、通常よりも納期がかかることでしょうか。

下記は6mm厚の透明ガラスと3mmガラスを2枚張り合わせた防音合わせガラス(AGC株式会社のラミシャット30という商品)の防音性能を比較したグラフです。

単板ガラスと防音合わせガラスの比較グラフ

単板ガラスにおける2kHzあたりの大きな凹みがみごとに解消されているのが分かります。

ただし、あくまでも防音合わせガラスはコインシデンス効果を解消するもので、それ以外の音域の防音性能を高める効果はありません。上記のグラフもコインシデンス効果以外の音域についてはほぼ6mmガラスと同等の防音性能であることが分かります。

二重サッシで2つの問題を同時に解消!

  • ペアガラス・・・共鳴透過現象
  • 単板ガラス・・・コインシデンス効果

これらの物理現象は防音工事にとっては敵です。両方ともやっつけたいところです。

たいていの住宅にはすでにペアガラスの入った窓が付いています。それを防音合わせガラスに交換するのも良いでしょう。しかし、ペアガラスの窓はそのままに、もっと手っ取り早く、しかも防音合わせガラスよりもより防音性能を上げることができる方法があります。

それが二重サッシです。

ペアガラスと二重サッシ、なんとなく似ているように感じますが、まったく別ものです。

ペアガラスは1つのサッシに入っているガラスが2枚セットになっているもので、二重サッシはサッシそのものが2つ存在します。写真を見ると一目瞭然ですね。

二重サッシ

二重サッシにするときのポイントは、もともと付いているサッシがペアガラスの場合、あとから付けるサッシの方を単板ガラスにすることです。

こうすることで、共鳴透過で中低音域に欠点が出るケースが多いペアガラスと、コインシデンス効果で高音域に欠点がでやすい単板ガラスのお互いのウィークポイントを補い合うことができます。

またここでグラフにしてみます。

単板ガラス、防音合わせガラス、二重サッシの比較グラフ
※二重サッシのデータはAGC発行の資料より

防音合わせガラスが高音域のコインシデンス効果のみに改善がみられるのに対し、二重サッシにすることでほぼ全音域において防音性能の向上が得られることが分かります。

防音工事では窓を二重サッシにすることがmustです。


まとめ

  • ペアガラスは単板ガラスよりも防音効果が劣る
  • 単板ガラスは高音域に欠陥がある
  • 二重サッシが手っ取り早く、かつ効果大

さて、今回はあくまでもガラスに着目して書きましたが、実は窓はガラスだけではなく隙間という問題もあって、現実には一筋縄ではいかないのです。ガラスばかり強化してもサッシの隙間がおろそかになっていれば元も子もありません。

次回はそのことについて書いてみようと思います。

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