こんにちは、まったりマイペースなアマチュアピアノ弾きの紅です。
先日、2年振りに自宅のピアノを調律してもらいました。
いつもは1年ごとのペースなのですが、昨年はちょうど最初の緊急事態宣言中で見合わせ、その後もコロナ禍が落ち着いたらやろうと思っていたのですが一向におさまる気配がなく、ピッチの狂いにそろそろ我慢の限界という段階で依頼しました。
調律はピアノを購入したピアノプレップの店主、山内さんにお願いしています。
いつもとても丁寧にメンテナンスしてくださいます。調律はもちろん、整調、整音まで僕の好みを聞き入れて時間をかけて丁寧にやっていただけるのでとても満足しています。
今回もメンテナンス後はとても澄んだ綺麗な音色が復活、タッチも良く大変弾きやすくなりました。
テキトーに弾いても良い音が出てしまうので
訓練にならないという贅沢な悩み・・
実はピアノプレップさんはチェコのピアノメーカー、ペトロフの専門店なのですが、無理を言ってディアパソンを仕入れていただきました。
僕がピアノを買ったのは2013年で、まだピアノプレップさんがオープンして間もないころでした。いまでは上質なピアノを置くペトロフ専門店として、ピアノ好きの間では評判のお店になりましたが、当時はまだ開業したばかりで経営が軌道に乗る前だったため、ディアパソンを売ってほしいという無理を聞いてくださったんだと思います。
ではどうして僕がディアパソンというマイナーメーカーのピアノを購入することになったのか、書いていきます。
いままで弾いてきたピアノ
僕が初めてピアノに出会ったのは3歳のとき、実家にヤマハのアップライトU1Hがやってきたときでした。フタを開けると突然、白と黒の歯のようなのが出てきたのを覚えていて、いまでも記憶に残っているということは相当に強い印象を受けたのだと思います。
そのピアノを結婚して家を出るまでずっと弾き続け、その後は妻の実家で眠っていた同じくヤマハのアップライトU1Xを譲り受けました。
ピアノを続けていれば誰でもグランドピアノが欲しくなり、もちろん僕もそうだったのですが、置く場所もなければ買う余裕もなく、夢のまた夢でした。
ですが20代のころ、ピアノサークルのオフ会に参加したときスタインウェイのグランドピアノに初めて触れ、あまりの美しい音色に衝撃を受けたのです。
それ以来、スタインウェイは無理としてもいつかは気に入った自分のグランドピアノを所有したいという思いは膨らみ、ずっと心の中で温めて続けていたのです。
そしてそのチャンスは30代半ばにしてやっと訪れました。
家を建てることになり、当時すでに防音室をつくる仕事に就いていたことから、防音室付きの家を自分で設計してそこに新しいグランドピアノを置くことを計画しました。
ピアノ探しの旅
自邸の設計と並行して、ピアノを探してお店をいくつか訪れてみると、自分の好みがなんとなく分かってきます。
スタインウェイ
言わずと知れた高級ピアノの代名詞です。
スタインウェイは色んなところで弾いているのでその良さは分かってはいるのですが、良い音がするものとそうでないものとバラツキが大きいと感じていました。やはり状態による個体差は無視できないですね。
しっかりメンテナンスされたスタインウェイは誰が弾いても素晴らしい音色で鳴り、世界中のコンサートホールでスタンダードとなっている理由がよく分かります。
日本に入ってきているのは主にハンブルク製のものですが、まれにニューヨーク製のものに出会えることがあります。
一般的にハンブルクのものに比べ、ニューヨークは音が明るくキラキラしていると言われますが、実際に色々と弾いてみた感じでは逆の場合もあり、やはりこれは個体差と言うしかないのでしょう。
タッチは全般的に浅めで軽く、僕には弾きやすく感じます。
O-180、A-188、B-211、C-227、D-274、新品も中古も複数弾きましたが、当たり前ですが大型になるほど深みが増し、特にバスの奥行感はフルコンにおいて最高のものとなります。
中古でも手が届かないほど高額ですが、品質は折り紙付きで、間違いなく最高峰のピアノです。
ベーゼンドルファー
いまではヤマハの資本下に入ってますが、スタインウェイ、ベヒシュタインと並んで世界3大ピアノと言われる歴史ある名門。
スタインウェイが誰が弾いても良い音が出るのに対し、ベーゼンドルファーを鳴らすのは難しいと言われていますが、僕はそのしっとりとした柔らかい音色が意外と性に合っていることに気が付きました。
もっとも、ベーゼンドルファーのショールームで弾いた(model-214)ということもあり、よく調整されていたものであったことが大きいのでしょう。
しかし、これも手が届くような代物ではありません・・・
ベヒシュタイン
僕が一番好きな作曲家、ドビュッシーがお気に入りだったピアノです。
“ ピアノ音楽はベヒシュタインのためだけに書かれるべきだ ” というドビュッシーが残した言葉は有名です。
そんなこともあり、非常に期待感をもってお店を訪れました。
ですが、実際に弾いてみると・・・なかなか弾きにくかったのです(汗)
音の立ち上がりがとても速く、鍵盤に触れた瞬間に音が出ます。非常にデリケートなタッチが求められ、特に小さな音を出そうとすると指先の繊細な感覚が必要で、そうっと弾かないと自分が求めているよりも大きな音が出てしまうのです。
ある意味、タッチの訓練には良いかもしれません。ベヒシュタインが弾きこなせれば、ほかのピアノでも綺麗な音色を出すのはたやすいと言えそうです。
音そのものはとても透明感があり、確かにドビュッシーなど近現代フランスものには合っているのではないでしょうか。
試弾した型番は失念しましたが、C3クラスのサイズのものだったと思います。
ファツィオリ
ピアノメーカーとしては新興と言えるイタリアのメーカーです。
歴史が浅いにもかかわらず、いまでは3大ピアノと肩を並べる評価を得、著名な国際ピアノコンクールの正式ピアノとしても用いられています。
日本ではスタインウェイの極東地区のマネージャーだったアレック・ワイル氏が惚れ込み、スタインウェイを退職してファツィオリジャパンを立ち上げました。実は以前、防音室をつくったお客様の部屋にファツィオリが納品されたとき、ワイル氏に会いました。その言動から心底ピアノを愛している方なんだなと感心した記憶があります。
僕自身はわずかしか触れておらず、良し悪しを判断できるほど試弾したことがないのですが、ファツィオリで録音されたCDはいくつか持っていて、それらを聴いた限りでは艶やかかつふくよかな音色で濃密、それでいて透明感があるという唯一無二の音色だと思います。
以下はファツィオリで演奏されたCDで録音品質の優れたものです。
ヤマハ
日本のスタンダード、そして近年は海外、特にフランスでは持っていることがステイタスになるほど評価の高いピアノメーカーですね。
個人的に毛色の変わった趣味性の高いピアノを選ぼうとしていることもあり、日本ではどこでも見かけるヤマハはノーマークでしたが、訪れた楽器店はどこでも置いてあるのでいくつか試弾をしてみました。
当時発売されたばかりのCXシリーズ(試弾したのはC3X)は手になじみ、とにかく弾きやすいのです。そしてなんとなくホッとするというか安心できるのです。長年ヤマハで育ってきたことから、その音が身体に沁みついているのでしょう。
品質が高くコスパにも優れ、素直にヤマハを買っておこうかと半ば本気で考えましたが、やはりここはこだわりのピアノを探すんだととりあえず留保しました。
昔から巨人やトヨタなどNo.1を避けるあまのじゃくなところがあります
カワイ
ヤマハと同じく近年では海外でも評価の高いメーカーです。ヤマハやカワイのピアノが安く手に入る日本は恵まれているのかもしれません。
表参道のカワイショールームに行きました。ここでついにお気に入りのピアノに出会います。
それはシゲル・カワイSK-2です。
シゲル・カワイはレギュラーモデルに対し、高級モデルとしてラインナップされたシリーズです。カワイにとって中興の祖と言える河合滋の名を冠したもので、素材や構造に徹底的にこだわり、カワイのもつ技術を惜しみなく注ぎ込んで開発されたそうです。
触れた瞬間にその音色に惹きこまれたのを覚えています。これはいままで持っていたカワイの印象(渋めで落ち着いた玄人好みな音だと思っていた)とはまるで違う、なんて綺麗な音なんだろうと思ったのです。
派手さやパワフルさは無いものの、繊細でやさしく、そして清流のように澄み切った音色は完全に僕の好みでした。タッチも浅く軽やかです。
その日はこれで決まりだな!といささか興奮気味のまま帰路についたのでした。
※後日もう一度訪れましたが、そのときはスタインウェイとベーゼンドルファーと並べてSK-3が置かれていて、弾き比べできるようになっていました。世界の銘機と比べさせるなんてよほど自信があるのでしょう。SK-3は前回試弾したSK-2と同じく、自分の好みの美しい音色でした。
ボストン
スタインウェイが設計し、カワイが製造しているブランドです。
表参道のカワイに展示してあったGP-178を試弾してみたのですが、シゲル・カワイを弾いたあとだったのが悪かったのでしょう。シゲル・カワイの印象が強すぎてなかなか冷静に評価できません。
少なくとも自分にとってはシゲル・カワイを超える良さを感じることができませんでした。
ディアパソン
国産ブランドですが、ヤマハ、カワイと比べると著しく知名度が低い知る人ぞ知るピアノです。
当時はカワイの資本下にあり、同じ工場で作られていました。(いまはカワイが吸収合併してカワイが製造・販売するブランドのひとつです)
ボストンと同様、表参道に展示してあったので触ってみましたが、カワイのレギュラーモデルに似たような音だなと思ったくらいで、取り立てて候補に入るようなものではなかったです。
少なくとも、数年後に自分が購入することになることは当時はまったく想像もしませんでした。
長くなったので次のページに続きます。