防音工事の勘違い その2:二重サッシ編

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こんにちは、防音・音響設計の建築士、紅です。

残暑が厳しくてまだまだ日差しがまぶしいですね! 今年は夏のはじめにサングラスを新調しました。そしてソフト帽もかぶったら、妻から「誰だよ」、子どもからは「チャラい」と言われました・・・

ソフト帽とサングラス

さて、前回その1の記事では、ペアガラスは防音性能が単板ガラスより高いと多くの方が勘違いされていることを題材にガラスの防音性能について書きましたが、その続きで二重サッシについて書いていきます。

最初に結論をまとめておきます。

  • 引違い窓の二重サッシは防音性能がイマイチ
  • 縦すべり出し窓、またはFIX窓の二重サッシがオススメ
  • もともと付いている引違い窓を交換しないで防音効果を高める方法あります
  • 二重サッシにするだけではだめ、部屋全体をトータルに防音する必要アリ

それでは詳しく解説していきます。

目次

窓はガラスだけに注目しても意味がありません

前回、二重サッシにしてそれぞれのサッシにペアガラスと単板ガラスを入れるのが窓の防音性能を上げるのには最も手っ取り早くて効果が高いと書きました。それはペアガラスは中低音域が弱く、単板ガラスは高音域が弱いというそれぞれの欠点を補い合うからというのも書いた通りです。

ではガラスの構成に気をつけて二重サッシにすればそれでよいかというと、実はそんなに簡単な話ではないのです。

防音工事の専門業者ではないふつうの工務店やハウスメーカーがつくった防音室にありがちなのが、日本の住宅で最もよく使われる引違い窓を二重サッシにしているケースです。これがまさに防音工事の勘違い(あるいは大変失礼ながら、無知と言った方が合っているかもしれない)です。

防音室付き住宅を商品化しているハウスメーカーがありますが、そこでもこのパターンであることに驚かされます・・

窓は音がガラスを透過することのほかに、サッシのわずかな隙間からも音が漏れます。そしてその隙間はサッシの形式によって差があるのです。

窓には様々な形式があります。代表的なものを挙げると、

  • 引違い窓
  • 上げ下げ窓
  • 縦すべり出し窓(外開き窓)
  • すべり出し窓(横すべり出し窓)
  • FIX窓(はめ殺し窓)
  • 外倒し窓
  • 内開き/内倒し窓(ドレーキップ)
  • ルーバー窓
  • 回転窓   ・・・などなど

この中で日本の窓に一番使われているのは左右に開閉する「引違い窓」です。日本家屋には昔からふすまや障子があるからこの形がなじみやすいのですね。実はこの引違い窓は防音という点ではイマイチなのです・・

レールの上をスライドさせるという機構から、どうしても隙間ができやすくなってしまうためです。同じような理由で上げ下げ窓も防音の面からはおすすめできません

内開き、内倒し、回転窓は開閉形式から二重サッシにしづらいです。(内開き窓、内倒し窓でやっとことがありますがスマートな設計ができませんでした)

ルーバー窓は隙間だらけです(最近は気密性のあるものも出てきましたが)。もっとも、ブラインドのように外からの視線を遮りながら換気するためのものですから、トイレや洗面所、キッチンなどの水回りに使われ、居室に採用されるケースは少ないです。

今はなき「防音サッシ」

最近のサッシには昔あった「防音サッシ」という規格がありません。これは標準的なサッシの気密性が上がり、わざわざ防音サッシというグレードを設けなくても済むようになったからです。それでも開け閉めできるサッシにはわずかに隙間が存在します。

ではどんな形式の窓で二重サッシにすればよいのか

ズバリ、オススメは下記の2つです!

  • 窓を開けて換気したい場合 ・・・ 縦すべり出し窓
  • 窓からの換気が不要な場合 ・・・ FIX窓

縦すべり出し窓とは、縦方向を回転軸に、上下の窓枠のレールに沿って外側へすべり出しながら開く窓です。・・・分かりにくいですよね。端的に言うとドアのように外に押し出して開けるタイプの窓です。

気密性を高めるために扉と枠の接点にパッキンがぐるっと4周まわっていて、これが防音上有利に働きます。縦すべり出し窓の内側に内開きの窓を付けて二重サッシにすることで高い防音性能を得ることができます。

FIX窓は名前の通り開閉できない窓です。当然ながら隙間がないので、防音性能としては窓の中で最も高いです。FIX窓の二重サッシにして、それぞれの窓に厚さの異なるぶ厚いガラスをはめ込み、かつたっぷり空気層を取れば窓の中では最強の防音性能となります。

縦すべり出し窓の二重サッシ
縦すべり出し窓の二重サッシ
隣家の窓が目の前にあっても問題なし
FIX窓の二重サッシ
FIX窓の二重サッシ
舞台の奥にしつらえた巨大なピクチャーウィンドウ
縦すべり出し窓とFIX窓の組み合わせ
縦すべり出し窓とFIX窓を組み合わせた二重サッシ

ただし、縦すべり出し窓にも、FIX窓にも防音以外の面ではデメリットもあります。

【縦すべり出し窓のデメリット】
  • 開け放したときに扉がジャマ。場合によってはぶつかって危険
  • シャッターや格子が付けられないので防犯面で劣る(※1)
  • ほかの窓にくらべて大きな窓にできない
  • 引違い窓よりコストがかかる
  • 1 電動シャッターか防犯ガラス、防犯フィルムを採用することで対応可
【FIX窓のデメリット】
  • 換気ができない(※2)
  • 二重窓間の清掃が自分でできない(※3)
  • 2 防音室の場合は通常換気扇が付くので実用上は問題ないですが、風を通すという快適さは得られません
  • 3 内窓をケンドン式というフレームごとはずせるサッシにすることで解決できます。ただしFIX窓の特徴である枠が細くてすっきりしたデザインが犠牲になります
番外編:(横)すべり出し窓
横すべり出し窓の二重サッシ

(横)すべり出し窓は縦すべり出し窓を90度回転した感じもので、窓の上枠側に軸があって外に押し出すタイプのものです。機構としては縦すべり出し窓と同じなので、二重窓にすれば同等の防音性能を得ることができます。ただ、上枠側が軸になっている内窓というのは既製品では存在しないので、建具屋さんに特別に作ってもらうか、あるいは内窓のみ縦軸の開き窓で妥協するかになります。

引違い窓がすでに付いている場合(マンション編)

縦すべり出し窓やFIX窓が良いのは分かったけど、我が家はマンションだから付いてる引違い窓を交換できないんだけど・・という方、ご安心ください、マンションは引違い窓でもほぼ大丈夫です!

というのは、マンションの場合、窓の目の前に隣の家が近接していることがないので(たまにありますがその場合は次節、一戸建て編をご覧ください)、引違い二重サッシの防音性能でも問題ないことがほとんどです。

引違い窓の二重サッシ
マンションならこんな大きな引違い窓でも二重サッシで問題ナシ

もし共用廊下に面している窓で、廊下に聞こえてもそれが苦情となることは滅多に(経験上一度も)ないです。誰しも自分の居住スペースに聞こえるのは小さな音でも不快に感じても、共用スペースなら気にしないものです。

ただし演奏していることを廊下を歩いている人にも聞かれたくないという場合は、三重サッシにするなどの対策が必要です。

実は三重サッシは別の理由でおすすめしていません。詳しくはこの先を読んでいただければと思います

引違い窓がすでに付いている場合 (一戸建て編)

うちはいま住んでる一軒家に防音室が欲しいんだけど、窓が引違いなんだよね、という方もいらっしゃるかと思います。でも大丈夫!

一戸建ての場合はマンションと違って窓のリフォームができますから、予算に余裕がある場合は引違い窓を取り去って、新しい縦すべり出し窓かFIX窓を付けて二重サッシにしましょう。

予算に余裕がない場合は引違い窓の隙間をコーキングで埋めて、内側にFIX窓を付ければ二重FIX窓可できます。開閉できなくなってしまいますが換気扇を付けることで空気の入れ替えはできます。建築基準法(採光面積、換気量)もクリア。

さらに予算がなく、かつ窓がいらないという方は塞いで壁にしてしまうこともできますが、二つあるうちの一方は窓として残すなど、法規上の採光面積以下にならないようにする必要があります。

建てたばかりや新築の建売住宅など、新品の引違い窓を壊すのがもったいない、また、できれば演奏していないときは窓を開けて風通ししたい、という場合もあるかと思います。でも大丈夫!(コンビニでも・・・SMBCの回し者ではありません

その場合は既存の引違い窓の内側に、内開き窓とFIX窓を組み合わせた窓を付けることで二重サッシ化します。ただし縦すべり出し窓同士やFIX窓同士の二重サッシに比べると防音性能は劣るので、窓のすぐ目の前に隣の家がないなど、条件付きとなります。

そして最後の手段が、引違い窓の三重サッシ化です。

この方法、防音工事の専門業者でもよくやります。常套手段となっていると言ってもよいかもしれません。確かに効果はそれなりにありますし、コストも安く、工事もラクです。

でも個人的にはあまり好きではありません

だって見た目が良くないじゃないですか。それに使い勝手も悪いと思いますよ。開け閉めするときの動作を想像してみてください。鍵を開けて左側の扉をガラガラ、もう1回鍵を開けて左側の扉をガラガラ、さらにもう1回・・・。右側を開けるときはさらにメンドクサイ! まあ防音室なんであまり窓を開けないのでしょうけど、これが例えばバルコニーに出る窓で毎日洗濯物を干すとしたら・・・僕はイヤです。

引違い三重サッシ
バルコニーに面した三重サッシ。このマンションは交通騒音対策でもともと二重サッシでしたが、
防音室を絶縁構造にするため仕方なく三重にしました。隣のリビングからバルコニーに出られます

最後に、窓だけ防音しても意味がない

2回にわたって長々と窓のこと書いておきながらなんだよ!と言われそうですが、本当です。

窓の防音が重要なことは確かです。特に一戸建て住宅での防音室づくりは窓がキモであることは間違いないです。

でも窓以外の防音工事と組み合わせて初めて二重サッシの効果が得られるのです。

例えば、縦すべり出し窓の二重サッシは概ね50デシベル音を小さくする効果があります。でも一般住宅の壁は良くても35デシベルです。二重サッシにしても壁がそのままなら壁から聞こえてしまうので意味がありません。

また、昨今はほとんどの家に給気口が付いています。給気口は気密性ゼロなので、窓より防音性能が低いです。

そして床下からも、天井裏からも、部屋の出入口からも音は伝わっていきます

防音室は床、壁、天井をぐるっと絶縁二重構造にするのが原則です。そして二重サッシ、防音ドア、防音給排気工事を行ってはじめてトータルの防音性能が得られるのです。

そしてもう一つ、どんな音を出すのか(何の楽器を演奏するのか)、立地(周辺環境)、建物の構造などによって、引違いの二重窓でも十分であったり、逆にFIXの二重窓でも不十分なケースもあります


「防音工事の勘違い」というテーマですが、まだまだほかにもいろんなネタが思いつきます。こんなに手の内をさらしちゃっていいのかと思いつつ、この先もマイペースに書いていきたいと思いますので、お読みいただけると幸いです!

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