こんにちは、へっぽこ音楽愛好家の紅です。
6月15日に開催されたピアノデュオ・ドゥオールのリサイタル“Duo Energy”に行ってきました。
僕は以前、仕事でドゥオールのレッスン室(2台ピアノの音楽室を2部屋)を手掛けていて
それ以来ときどきコンサートにご招待いただいています。
ところで、音楽家の方々は、コロナ禍による演奏会の中止、延期が続き本当に大変だと思います。
そんな条件下で自主リサイタルの開催は多くの困難があったかと推察します。
今回のプログラムも、会場の東京文化会館側のコロナ対策はもちろんのこと
観客の動きや接触を抑えるために昼と夜に1時間ずつ、2回に分けて途中休憩なし、
終演後の面会、お花やプレゼント渡しはなしなどソフト面での配慮もありました。
ピアノデュオ・ドゥオールは藤井隆史さん、白水芳枝さんによる連弾、2台ピアノのユニットで
近年の国内ピアノデュオでは最も精力的に活躍されているお二人ではないでしょうか。
一年中、全国で演奏会や公開レッスンの依頼があり国内を飛び回っており、
そのほかにもNHK Eテレ『天才テレビくん YOU』への出演や音友WEB連載
そして毎年夏恒例となった彩の国さいたま芸術劇場で4日間にわたるデュオセミナー主催など
いったいいつ休んでいるのだろうかという活躍ぶりです。
ドゥオールの演奏会のほとんどは依頼を受けて行われるようですが
今回のリサイタルは6年ぶりの自主開催ということで
趣向を凝らしたオリジナリティあふれるプログラムでした。
昼(マチネ)の回は躍動的で明るい曲目を集めたもので
夜(ソワレ)の回は静かで夢見心地になるような曲が並んでいます。
今回僕はマチネの方に行ってきました。
以下がマチネのプログラムです。
- ラフマニノフ 交響的舞曲op.45 第1楽章
- ラフマニノフ 組曲第2番op.17より第3曲 ロマンス
- ボロディン=ポープ だったん人の踊り
- サン=サーンス=ガーバン 動物の謝肉祭
(谷川俊太郎作詞 ドゥオールの朗読と共に)
それではそれぞれの感想を綴ってみます。
ラフマニノフ 交響的舞曲op.45 第1楽章
ラフマニノフの2台ピアノはどれも傑作揃いですが、その中でも
『交響的舞曲op.45』は規模が大きくかつ高い演奏技術が求められます。
「交響的」という題名が示すようにオーケストラのために書かれた曲ですが
先に2台ピアノとして作られました。
そして初演は当時最高最強のピアニスト、ラフマニノフ自身とホロビッツによるものでした。
そしてドゥオールの演奏は、ピアノ2台だけでオーケストラの重厚な響き、
壮大なスケールを感じさせるものでした。
幾重にも重なる音が2人の絶妙なコンビネーションで見事に弾き分けられ
色々な楽器の音色が聞こえるようでした。
ラフマニノフ 組曲第2番op.17より第3曲 ロマンス
続いて同じくラフマニノフの『組曲第2番』から『ロマンス』。
作品番号が17で、次の18が有名な『ピアノ協奏曲第2番』ですから同時期に作曲されたようですね。
前曲とは変わって優しく美しい曲です。
ですが徐々にスピードアップ、音も分厚くなって、中間部は2台ピアノならではのボリューム感があります。
ドゥオールの演奏は一音一音が鮮明で、キラキラした音の粒が降ってくるかのようです。
ボロディン=ポープ だったん人の踊り
ボロディンは本業が医者、化学者でしたが、後世に名を残したのは作曲家としてです。
『だったん人の踊り』は代表作のオペラ『イーゴリ公』の中の1曲で、
作曲家や曲名は知らなくてもこの曲のメロディは誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか。
YouTubeにはドゥオールによる演奏が公開されています。
2台ピアノでルバート=テンポを揺らしてメロディを歌い上げるのはなかなか難しいのですが
奏者同士が合わせようとしている感じはなく、全く自然で安心して聴いていられます。
目を閉じると2台で弾いていることがわからないくらいに一体感があります。
サン=サーンス=ガーバン 動物の謝肉祭
そして最後は連弾による『動物の謝肉祭』です。
原曲はピアノ2台を含む小編成の管弦楽にために書かれた14曲からなり、
それぞれに動物のタイトル(うち1曲はピアニストという人間)が付いているユニークな曲です。
こちらもYouTubeに本人による朗読付き演奏があり、下の動画は最初の『序奏』です。
連弾しながら朗読というのが面白いですね。
ドゥオールのお二人は表情豊かに語るので、演劇もできそうです!
コロナによる閉塞的な毎日が続くなか、久しぶりのコンサートにとても充実した気持ちになりました。
以上、コンサートレポートでした。
余談
音響設計者として雑感ですが、上野・東京文化会館の小ホールは響きがとても良いです。
以前、僕が好きなピアニスト藤井一興さんのリサイタルに行ったときも
本当にピアノの音色が綺麗で感激したのを思い出しました。
(もっとも透明感のある美音が藤井一興さんの持ち味ですが)
一方、大ホールの方はややデッド気味で個人的にあまり好みではないのです。
以前、ヘレヴェッヘ指揮コレギウム・ヴォカーレ・ヘントのモーツァルト、レクイエムを聴きましたが
ちょっと声楽向きではないなと思いました。
東京には数多くのホールがありますが、僕が好きなのはここの小ホールと
汐留の浜離宮朝日ホールでしょうか。
そしていままで仕事でお付き合いのあった複数のピアニストからも同じ意見を聞いています。
きっとピアノにとってちょうどよい響き具合なのだと思います。