映画感想『建築学概論』~建築学科男子と音楽学科女子の初々しい恋

建築学概論

突然ですが、もしあなたのもとに、実らなかった初恋の相手が15年ぶりに現れ、それが仕事のクライアントだったりしたら、あなたはどのような感情を抱きますか?

こんにちは、90年代に建築学科の学生だった紅です。そんな僕が以前ハマった映画を紹介したいと思います。

2012年に韓国で公開された『建築学概論』。タイトルはなんだかお堅い感じですが、中身は切ない初恋がテーマの恋愛映画で、本国だけで観客動員数400万人を超えた大ヒット作です。知人(日本人女性)でこの時期ソウルに住んでいた方がいるのですが、映画館で4回も観たそうです。

建築設計事務所で働くスンミンに、家を建ててほしいと職場に訪れてきたのは、15年前の初恋の相手ソヨンでした。

15年前のスンミンは建築学科の1年生。別学科の単位取得で「建築学概論」の授業を受けにきていた音楽学科のソヨンに一目ぼれ。一緒に課題に取り組むなかで次第に仲良くなっていくのですが、なかなか告白することができず、小さな誤解から恋が成就することなく離れ離れになってしまいます。

現在と15年前の2つのストーリーが交互に展開するという作品構成から主役が4人、映画のポスター(DVDのパッケージ)に並んで写っています。

建築学科の男子と音楽学科の女子の恋、しかもそれが90年代ということで、僕にとってはその舞台設定と時代がどストライクなわけです。90年代的な小道具(ポータブルCDプレーヤー、ヒップホップパンツなどのファッション、髪型、HDDの容量が1GBで「一生かかっても使い切れない」)もいちいち懐かしい。

現在のスンミンが家の新築案のプレゼンで、建築造形の用語を散りばめながらあれこれ提案するも、ソヨンが難癖付けて却下するというシーンが同業者として観ていて面白い。このあたり、イ・ヨンジュ監督は延世大学(韓国の名門私立大)の建築学科出身で、卒業後も10年ほど建築士として働いていたのでリアリティがありますね。

過去のソヨンは、登場したときはほぼスッピンだったのが、終盤では綺麗にお化粧しているところなど、大学生男子にはそういう女心は分からないんでしょうね。

僕はいまでも気づかないと思う・・

イ・ヨンジュ監督はあるインタビューの中で「建築家が建築主を理解する過程が恋愛と似ている」と言っており、ここは大いに共感を覚える部分です。

建築家というのは、クライアントから直に要望を聞き出すだけでは御用聞きに過ぎず、会話や言動の中から、本人も意識していないような願望を見出しそれを建築という形にして具現化します。そしてこの映画では家づくりの過程(古い家を修復して新しいものに蘇らせること)と過去の恋愛を重ね合わせているのでしょう。

最後に、この映画に使われている主題歌がすごく良いです。

フォークユニット、展覧会の『記憶の習作』という曲で、映画の演出に一役買っているだけでなく、重要な役割もあり、その歌詞もストーリーにドンピシャです。やはり90年代に韓国でヒットした歌で、めっちゃムーディ。安全地帯(古くてすみません)をイメージしてもらえると分かりやすいかもです。

この曲を聴くだけでも泣けてきます

https://www.youtube.com/watch?v=cOVWcscxdyE&t=2s

出だし(Aメロ)はだいぶ低いのですがサビの部分は高く、その音域の広さからカラオケで歌うには難しそうです。鍵盤で確認してみたところ、G2~A♭4と2オクターブと半音の開き(裏声なし)がありました。

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